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「規格外」の農産物を加工品として販売。
小俣園芸の小俣シゲ子さんインタビュー


2023/03/16

 「商品として出荷するにはサイズが基準に合わない」「見た目がいびつ」といった理由で市場に出荷されにくい「規格外」の農産物。大きさや見た目が出荷条件に合わないだけで、味にはまったく問題ないにもかかわらず、こうした規格外農産物の多くが廃棄されてきました。農林水産省の作況調査によると収穫量の約20%。2020年のデータでは、秋冬野菜の収穫量290万トンのうち、58万トンは規格外野菜として廃棄されています。

 そのため近年、相模原市内でも「規格外農産物」を利活用する取り組みが積極的になってきました。そして今回、お話をうかがったのは、規格外農産物の加工食品で市内外から高評価を集めている相模原市緑区の農家、小俣園芸の小俣シゲ子さんです。

廃棄されてしまう野菜を、美味しく食べてもらえる商品に

 「これが露地(栽培)のトマトのピューレ。ハウス(栽培)のトマトで作ったピューレとブレンドしてソースにするの。トマトは収穫時期によって色や糖度が違うので、年間を通して同じ味、同じ色のソースにするためにブレンドしているの」

 そう言いながら真っ赤なトマトピューレの袋を見せてくれた小俣さん。小俣園芸は45,000㎡の農地で、主軸となるトマトのほか、ゴボウ、ニンジン、ダイコン、トウモロコシなど、約20品目を生産していて、その規模は市内でも随一。横山小学校のそばには週3日営業する直売所もあり、近隣住民はもちろん、その味と価格に惹かれた遠方からのお客様も多く訪れます。

 旬の野菜がずらりと並ぶ直売所の一画で売られているのが、小俣さんが作る加工品の数々。メインで栽培しているトマトは、ソースとジャムに。また、塩抜きのために酒粕に漬けた後、さらに本漬けするため、完成まで1年半もかかるというキュウリの奈良漬け。地元の在来種である「津久井在来大豆」や相模原産のお米を使って手作りする味噌。白菜漬けやコンニャク、梅干しなど、手間暇をかけた加工品がそろっています。

これらの加工品すべてを作っているのが、農家に生まれ、農家に嫁いだ小俣シゲ子さん。御年80歳とは思えないお肌のハリと素敵な笑顔の持ち主です。

 小俣さんが規格外のトマトでソースを作り始めたのは平成7(1995)年。「SDGs」や「食品ロス」といった言葉が今ほどは身近ではなく、規格外品は当たり前のように廃棄されている頃でした。


 「戦後の何もない時代でしたから、私の世代は小さい頃から物を大切にするよう、教わって育ってきたんです。食べ物でもなんでも捨てるなんて“もったいない”と思うんです」と小俣さん。夫、武士さんが土にこだわって豚糞や牛糞といった自然のたい肥を使い、化学薬品や農薬を減らして栽培する野菜が、規格外というだけで目の前で廃棄されてしまう状況に、“もったいない”の気持ちが募っていました。

 そこで始めたのが無添加で手作りするトマトソースの製造。完熟トマトを煮てから手作業で裏ごしし、さらに煮詰めてソースにするのですが、ミキサーにかけずに裏ごしするため、トマトの風味がきちんと残るんだそうです。

 平成12(2000)年には農産加工所「トマトの花」を開設。トマトソースから始まった規格外作物の加工製造は、ジャムや漬物、味噌と種類を増やしていき、以前から交流のあった農家のお嫁さん仲間や長男の妻、二人の娘と一緒に、安全・安心な手作り加工を続けています。

 「明日は味噌を仕込むから朝5時起きなのよ」と笑いながら、発酵機から出したばかりの麹の具合を確認する小俣さん。小俣園芸で作っていない大豆やお米など、材料はなるべく地元のものを選び、添加物は使わない。ミキサーを使えば簡単に済むところを、手作業で裏ごしする。そういった小さなこだわりの一つひとつが、確実に消費者の心をつかみ、リピーター客を増やしてきました。令和2(2020)年1月には、こうした活動が評価され、神奈川県から「女性農業者活躍表彰」を受けたのです。

小俣さんから見た“もったいない”の今後とは

 「ただね、最近は食品加工をやめてしまう農家さんも出てきているのよ」


 というのも、令和2(2020)年に食品衛生法が改正され、小俣園芸の商品の一つ、漬け物は届出制から許可制になりました。それに伴い、基準をクリアするための設備投資が必要になったり、保健所とのやりとりが新たに必要になったりと、食品加工をしてきた農家さんにとって負担が発生してしまったのです。


 また、人手不足も悩みの種。現在、JA相模原市の援農者制度を利用して、農作業を担う人材を補っているものの、武士さんやご自身の年齢を考えると、いつまで現在と同じ規模で続けられるのか、といった不安もあるそう。
 設備投資の費用や人件費、作業の手間を考えたら、「値段を高くしないと、続けていけないかもねえ」と小俣さん。


 「でもね、夫と一緒なの。お客さんが“美味しいね”って言ってくれたら嬉しくなっちゃう。嬉しくなっちゃうと、そういうことは忘れちゃうの」

 そして最近、消費者側の意識も変わってきたと小俣さんは話します。


 「直売所でもね、サイズが不ぞろいだったり、見た目がよくないものを値段を下げて並べておくと、あえてそっちを買っていく人が増えたんですよ。若い人もいろいろ勉強しているのね」


 例えば小俣園芸の土壌がいいため、長く立派で味がいいと評判のゴボウ。通常は1mを優に超える長さで販売しているが、短く切ったB級品も喜んで買われていくという。

 もともと好奇心旺盛で勉強熱心な小俣さんは、地域の農業技術センターで最新の技術や知識を吸収し、行政やJAの研修会などへも積極的に参加してきました。トマトソースから始めて30年近くの加工品製造のノウハウやレシピの蓄積もあります。


 年に一度、神奈川農業大学の食品加工講習でトマトソース作りの指導をしているそうで、「技術やレシピもいいんだけど、一緒にやってみないと伝わらないことってあるんですよ。ちょっとしたコツというか、感覚というか。そういうものもきちんと次の世代に伝えたいですね」とのこと。小俣さんが培ってきたこれらの財産が、次の担い手に受け継がれ、さらに発展・進化していけることを願ってやみません。

【情報】
名称:小俣園芸野菜直売所
住所:相模原市中央区横山台1-38
Tel:042-761-1548
営業時間:月・水・土曜の午後2時~午後5時

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