藤野の水で美味しいビールを。
市内唯一のクラフトビール工房を訪ねる
2022/12/03

陣馬山のふもとにクラフトビール醸造所「Jazz Brewing Fujino(ジャズ・ブリューイング・フジノ)」(相模原市緑区佐野川)が開業して4年が経ちました。佐野川産の茶葉を香りづけに使う「AMP UP IPA」など人気商品を生み出している創業者の山口解さんに、ビールに対する思いや相模原市の魅力についてお聞きします。
子育ての環境を求めて藤野へ
――山口さんは相模原に移住されたそうですが、なぜ相模原に移られたのでしょうか。
こちらに移る前は農業関係のNPOに三鷹から通っていました。当時はまだ子供が小さかったので、子育てに素晴らしい環境だと思って2010年に引っ越してきたんです。
冬は寒かったり厳しいところもありますが、アート関係のアトリエがあったり、個性的な学校があったりして、お子さんのいる移住者の先輩も多い。もともと知り合いもいましたが、住んでみると思った以上にいろんなタイプの人がいて、地元の方ともつながりができて、助け合って暮らせてます。
期待していたとおり子育てにはいい環境でしたね。

ビールは地元の魅力をつなげるコンテンツ
――もともとクラフトビールを手掛けようと思われていたのですか?
始めようと思ったのはこちらに来てからです。農業に興味をもつ前は音楽関係の仕事に携わっていて、ビールって音楽やアートや、いろいろなものと親和性があるでしょう。
自然豊かな地域の特性を活かせることがないかなと考えるうちに、もともとビールは好きでしたし、きれいな水にも恵まれていることから、クラフトビールが地域のものをつなげるコンテンツのひとつになると思ったんです。
それでしばらく修行して、2018年に免許の交付を受けました。当時はまだコロナが流行する前だったので、地元の野外イベントなどにビールを出すようになりました。

地元の原料でおいしさを追究
――水がいいのはもちろんですが、ほかのこだわりを教えてください。
なるべく地元の原料を使うことです。知り合いの農家にお願いしてホップを栽培してもらって使用しています。寒暖差の大きいこのあたりはホップの成育に適した気候の最南端らしいんです。

それから副原料はいろいろ工夫しています。定番として『AMP UP IPA』と『VOX POP』の2種類と、季節によって限定のビールをつくっているのですが、『AMP UP IPA』は佐野川茶の茶葉を、『VOX POP』は柚子を使って香りをつけています。
限定の『unite』ではリンゴを使ったり、山椒を使ったり。
麦芽は現在は輸入していますが、ゆくゆくはこちらのものにしたいですね。
――クラフトビールってどれくらいの期間でできるものでしょうか。
1か月くらいです。1つの装置で1回にできるのが100本くらい、毎週製造しています。
ビールづくりでは水質調整をしたり濁りを除去するための清澄剤を入れたりすることもあるのですが、添加物は一切入れていません。無濾過、無清澄にこだわっています。
無濾過のビールには底に澱(おり)がたまります。これはビタミンB2が豊富で健康にもよいものですから、澱までゆっくり味わってほしいです。
自分の手で微調整をしながら、シャンパンみたいに瓶のなかで二次発酵させるので、おいしい炭酸になるんです。少量だからこそ可能な製造法です。

――毎日飲む定番商品というよりは、なにか特別な日とか、あるいは贈答品としてよさそうですね。
どちらで手に入りますか。
瓶では藤野駅前観光案内所(藤野観光案内所ふじのね)、相模大野のSagamix、藤野のスーパーまつば、古淵のイオン相模原店など。飲食店では藤野の大和家さんなどに卸しています。また、通販にも対応しています。
また、醸造所のある「ゆずの里ふじの」にも、都内の一流の中国料理のシェフとして活躍していた方の総菜屋さんや、自ら輸入するカカオ豆からチョコレートをつくるお菓子屋さんなど、面白い人が集まっています。そうした人のつながりがあるのも藤野の魅力ですから、以前のようにいろんな人が自由に集まれるようになって、一緒にビールが味わえるようになることを願っています。


■クラフトビール醸造所「Jazz Brewing Fujino」 https://www.jazzbrewing.fun/
■藤野観光案内所ふじのね https://info-fujino.com/info/